構造材料工学研究室は,土木工学におけるコンクリート分野において,副産物および廃棄物等を活用したコンクリートの性能向上,コンクリートの化学的性能評価,コンクリートの環境影響評価など,より良い社会の構築を目指す研究を行っています.土木構造工学研究室の半井健一郎教授などと連携して研究教育活動を行っています.
History
昭和51年(1976年)類制度移行に伴い、第四類の建築構造工学講座の中のひとつとして、前身の「土木材料工学」講座を「構造材料工学」教育科目として引き継ぎ、構造材料工学研究室が設置されました。昭和45年(1970年)当時においては、船越稔助教授、および米倉亜州夫助手で構成されており、鉄筋コンクリート梁のせん断強さや軽量コンクリートの研究を行っていました。米倉助手は昭和50年(1975年)から昭和53年(1978年)3月まで東京工業大学助手として高強度コンクリートの乾燥収縮およびクリープについて研究し、昭和53年4月講師として広島大学に復帰しました。昭和50年(1975年)、米倉助手の転出に伴い、岡本享久助手が採用され、船越助教授および岡本助手は鉄筋コンクリートのせん断強さに関する研究以外に鉄筋コンクリート梁のねじり強さに関する研究を行いました。昭和56年(1981年)に昇任した船越教授は同年に法政大学に転出し、岡本助手は昭和57年(1982年)2月東京工業大学助手として転出しました。
昭和57年(1982年)4月田澤栄一教授が大成建設技術研究所から着任し、同時に宮澤伸吾助手が東京工業大学を卒業後、すぐに着任しました。田澤教授はコンクリートの温度応力、新しい練混ぜ方法(ダブルミキシング)、アルカリ骨材反応、高性能減水剤を用いた流動コンクリートの研究等、広範囲の研究を行い、昭和57年(1982年)昇任した米倉助教授は、各種混和材を用いたコンクリートの乾燥収縮およびクリープ、プレストレストコンクリート(PC)梁のねじり強さ等について研究しました。宮澤助手は、田澤教授、米倉助教授と共に流動コンクリート 、アルカリ骨材反応を生じた鉄筋コンクリート柱の耐力と変形、PC梁のねじり強さ等の研究を行いました。また、田澤教授および宮澤助手は、セメントの水和反応に伴う自己収縮を世界で初めて発見し、これまで水和熱による温度応力によって生じると思われていたひび割れの発生がこの自己収縮による場合があること等も明らかにしました。米倉助教授は、炭素繊維等の連続繊維を用いたPC梁の曲げ、せん断、ねじり強さについて研究、三軸拘束によって得られる高靭性PC部材の開発や,既設構造物の三軸拘束による補強方法などを中心とした研究し、平成5年(1993年)10月に教授に昇任しました。
平成2年(1991年)4月より河合研至助手が東京大学大学院博士課程で学位取得後赴任し、コンクリート内部での物質移動、アルカリ骨材反応、炭酸化現象について研究し、田澤教授とともに微生物によるコンクリートの劣化やコンクリート表面の汚れ、セメントの水和反応過程の研究を行いました。平成7年(1995年)4月に宮澤助手が足利工業大学(現・足利大学)に助教授として転出しました。
田澤教授は,セメントの水和反応に伴う自己収縮について精力的に取り組まれ,自己収縮のメカニズム,予測法,制御技術等に関する研究を進めるとともに,平成10年(1998年)には,自己収縮に関する国際ワークショップを広島で開催しました.
河合助教授は,コンクリート内部の物質移動,コンクリートの微生物劣化,コンクリートの環境負荷評価などの研究を行い,平成9年(1997年)7月から平成10年(1998年)7月まで,アメリカ・ノースウェスタン大学へ在外研究員として留学しました.
平成11年(1999年)3月には,米倉教授が広島工業大学教授として転出し,同年4月には,宇都宮大学から佐藤良一教授が,東海大学から馬場勇介助手が着任しました.また,平成12年(2000年)3月には,田澤教授が定年退官しました.佐藤教授は,コンクリートの高性能化と構造部材挙動評価,コンクリート構造部材の時間依存性評価,連続鉄筋コンクリート舗装のひび割れ制御などの研究を行うとともに,廃棄物を利用したコンクリート構造部材の性能向上にも取り組み,国内外で初めて実用化を果たしました.